
こんにちは。今回は、インドネシアの昔ばなしを集めた本、「虹になった娘と星うらない」について紹介したいと思います。
はじめに
どんな本?
まずは、本そのものをご紹介しますね。
なんと、初版が1986年1月10日です。
本屋さんで見かけることは、あまりないと思います。
ですので、読むとしたら、図書館や古本として探すことが前提ですかね。
図書館でしたら、ほとんどの図書館で読むことができると思いますよ。
ちなみに古本の値段はピンキリなので、お財布と相談しながら…。
この本の構成
さて、そろそろ内容に触れていきたいと思います。この本の構成は、序文〜昔話の紹介〜後書きとなっています。
カバーのそでには、素晴らしい言葉があるのでここに引用します。
日本人は、日本人の心の歴史を誇りに思っています。それと同時に、よその民族の人が、自分の民族の心の歴史を誇りに思っていることを理解することがたいせつです。それにはまず、よその民族がどんな昔ばなしを伝えてきているのか知ることが、一番の近道だと思うのです。
<『世界の昔ばなし』刊行によせて>より
という言葉があります。
確かに、外国の料理や建造物などを知っていても、なかなか昔ばなしまで知ることは少ないですよね。
でも、そんな語り継がれてきた昔ばなしにこそ民族の心が宿っているんだよと、この言葉は教えてくれています。
昔ばなしは21遍収録されています。どれも珠玉のお話です。
全ての昔ばなしを詳細にまとめるとかなりのボリュームになってしまうので、一つ一つのお話の紹介は別の記事にまとめたいと思います。
今回は、ほんの少しだけ、紹介していきますね。
昔ばなし
さて、ここからは本書に収録されているインドネシアの昔ばなしを、簡潔に紹介していきたいと思います。
紹介していく中で、現代では避けられるべき言葉があるかもしれませんが、昔ばなしを尊重し、そのままの表現を使うことをご了承ください。
戦いをやめた人びと

頭がよく、思慮深い男のパゲタサンパは、部族同士の争いを止めようとしました。けれども戦いに飢えていた村人たちは、彼の言葉に耳を傾けません。部族の団結を守るため、パゲタサンパは渋々戦いに身を投じます。しかし、パゲタサンパの予感は的中し、戦いは次第に激しくなっていくのでした…。
虹になった娘と星うらない

ある日、星うらないは娘と恋に落ちました。けれども、その娘は、恋人としては許されない存在でした。2人が愛を貫けば神様の罰が当たってしまいます。村人達は、自分たちまで煽りを喰らってはたまらないと、2人を迫害しようとします。星うらないと娘はどんな運命を辿ったのでしょうか…。
トバ湖の魚

トバ湖は世界でも有数の大きな湖です。昔々、まだこの湖が無かった頃、このあたりにはひとりの若者が暮らしていました。そんなある日、若者は川で大きな魚を捕まえます。若者は上機嫌で家に帰り、魚を土間に投げ出した後、とりあえずご飯を食べました。一息ついた後、若者が土間の方を振り返ると…。
プリア・ポカ

7人の意地悪なおばさんをもつ、貧しくも美しいプリア・ポカ。ある日、おばさんたちに呼び出され水汲みに出かけたプリア・ポカは、偶然木陰で休んでいた王子様に見初められました。王子様は、プリア・ポカの美しさを見抜いていたのです。ですが、王子様がプリア・ポカを気に入っていることがおばさんたちにも知られてしまい、プリア・ポカはますます邪険に扱われました。そんなある日、プリア・ポカはおばさんたちに薪拾いを手伝わされます。一生懸命手伝うのですが、おばさんたちはわざとプリア・ポカをからかいます。悲しくなったプリア・ポカは、おばさんたちから離れ、森の奥へ進んでいきました。そこでプリア・ポカは7人の天女と出会いました…。
長者になる道

行商人のアトンと百姓のワンサは、自分たちの貧しさや不運にため息をついていました。重たい空気が流れた後、アトンが思い出したかのように、ある怪しい儲け話を話し始めました。ワンサの心は揺らぎました。アトンも、自分から話した儲け話なのに1人で事を進めることを迷っていました。それでもお金持ちになりたい2人は、運を試してみようと、その儲け話に賭けることにしました。2人は家を売り田畑を売り、一世一代の勝負にでます…。
シトゥ・バゲンディット湖の由来

インドネシア随一の美しい湖、シトゥ・バゲンディット湖。この湖の底には、ある1つの岩があります。その岩は、この湖の名前の由来にもなった悲しい物語を、現代まで紡いでいるのです。土地の古老たちの言い伝えによると、晴れて、風のない、湖の表面が鏡のように滑らかな日には、水底に七色に輝く数々の宝石を見ることができるそうです。水底に沈んでいる岩と宝石。昔々、この場所で何があったのでしょうか…。
ギリプ滝のクスマ姫

意地悪な姉姫達と暮らすクスマ姫は、息の詰まるような生活に涙を流し、心に深い悩みと悲しみを秘めていました。耐えかねたクスマ姫は、ある夜更けにこっそり屋敷を抜け出しました。やがて森にたどり着いたクスマ姫は、静かな木陰でうつらうつら。いつしか眠ってしまいました。その頃、屋敷では急にいなくなってしまったクスマ姫を巡って、周りは大騒ぎ。姉姫たちはこっそり喜んでいましたが。さて、クスマ姫はどうなってしまうのでしょう…。
チャンディ・プランバナン

隣国との争いに敗れ、父王を失ったララジョングラン王女。あろうことか、自国を滅ぼした元凶である屈強な若者、バンダワサに求婚されてしまいました。困り果てたララジョングランは年をとった大臣に相談します。すると、大臣は条件つきでバンダワサとの結婚を受けなさいと言いました。その条件とは、一晩のうちに、千個のチャンディを作ることと、ふたつの深い井戸を掘ること。バンダワサはこの条件を達成してしまうのでしょうか。果たして、ララジョングラン王女の運命は…。
セングルトゥの鬼退治

昔々、夫に先立たれて貧しい暮らしをしているニャイ・レニと言う女がいました。ニャイ・レニはお粥を売って生計を立てていました。ニャイ・レニのお粥は、甘くて香りが良く、大人気でした。一人娘のセングルトゥは、手のひらに乗るほどの小さな娘でした。そんなふたりが暮らす村には、ある季節になると森から鬼が来て小さな子どもたちを食べてしまいます。ニャイ・レニがお粥売りに出てる間、セングルトゥは自分よりはるかに大きな鬼に見つかってしまいました。けれども、セングルトゥは機転を利かし、勇敢にも鬼を退治しようと戦いました…。
マホロイの狩人

マホロイ川のほとりに住む狩人、サンギ。優しい心の持ち主のサンギは、ある日、隣に住む病気の子どもの為にイノシシを獲ろうと森へ向かいました。ところが、不思議なことにイノシシどころか他の動物にも出くわしませんでした。疲れ切ったサンギは、大きな木の下に座るとため息をつきました。そんな時、風に乗ってイノシシの匂いがしてきました。嬉しくなったサンギは、イノシシを目指して歩き出しますが、ある光景に目を奪われました。それは、サンギの人生をガラリと変えてしまう光景でした…。
サルの先祖

ジャングルの中のボロ小屋に、母親と2人で暮らしていたオデールは、ある日魚釣りに出かけました。ところが、その日は1匹も釣れません。それでも、オデールはじいっと魚が釣れるのを待っていました。すると、突然川上の方から、ごおっという音がして、1群れのサルが舟に乗ってやってきました。「オデール、餌は何だい?」舟の上の1匹のサルがそう尋ねてきました…。
マデと4ひきの動物たち

おっちょこちょいだけど純粋なマデは、養父に叱られてばかり。今日もこっぴどく叱られ気分が沈んでいました。悲しくて、涙が止まらなくなってしまったマデは、とぼとぼと村を去ってしまいます。「もう、飢え死にしたっていい」そこまで思い詰めてしまったマデは、森の中へ入っていきました…。
スクニット山のアチャじいさん

タリワン沼のほとりにあるメラランという村に、アチャじいさんと呼ばれる年寄りのじいさんが住んでいました。アチャじいさんは、タリワン沼で魚をとって売ったり、物を交換したりして、その日暮らしをしていました。ところが、ある日の漁のこと。いつもよりたくさん魚がとれていい気分になったアチャじいさんは、大切なお昼の礼拝を忘れてしまい…。
イルカと結婚した娘

昔々、インドネシアの海辺の村に、クタンブック・ミニャッという娘がいました。彼女は畑仕事に行く途中に、海辺へよってこっそりイルカと結婚してしまいました。畑仕事もおざなりになってしまった彼女。そんな彼女を訝しく思った家族は、彼女がイルカと結婚していることを突き止めるのでした…。
ふたりの兄弟

ふたりの兄弟、チュパックとガランタン。彼らは性格も体つきもまるで正反対でした。兄のチュパックは大柄で傲慢で荒々しく、弟のガランタンは痩せていて穏やかで思慮深い。ある日、母親の死をきっかけにして、彼らは旅に出ました。旅の最中、ある王国に辿り着いた彼らに、兄弟の命運を分ける出来事が待ち受けていました…。
船乗りのマホレ

貧しい漁師のマホレは、王様から命ぜられ、船旅に出ることになりました。王様がマホレに船旅を命じた理由は”ありとあらゆる財宝を集めること”。「何年かかってもいい。手ぶらで戻ることはならぬぞ」王様から念を押されたマホレは、初めての航海に出ました…。
七人の王女

滅亡したカイ王国の生き残りであるワット・ワリン姫は、6人の姉姫達と共に、ある国のはずれに隠れ住んでいました。ある日、7人の王女は自分たちの行く末を行者に占ってもらいました。彼の言葉によると、7ヶ月間カイ王国の王女として相応しい生活を送れば、理想の相手と結ばれるそうです。7ヶ月の間、その言いつけを守ったのは、ワット・ワリン姫ただ一人でした。ワット・ワリン姫の理想の相手は現れたのでしょうか…。
ロポカイ

ロポカイとはとても大きなヘビのこと。ジュリポイ村のワリペン族はいつもロポカイに生活を脅かされていました。ある日、ジュリポイ村にアンボナイという名の大男が訪れました。アンボナイは困っているワリペン族の話を聞くやいなや、ロポカイを退治してみせると約束しました…。
ヘビ人間

昔々、森のはずれに、ひと組の夫婦が暮らしていました。2人は仲睦まじく、お互いを助け合って暮らしていました。ある暑い日のことでした。女房は森へ薪拾いに出かけたのですが、あまりの暑さに喉がカラカラになってしまいました。すると突然、ヘビが飛び出してきました。けれど、ヘビは女房に驚き、すぐに消えてしまいました。ヘビの去った後には泉がありました。女房はすぐに駆け寄り、泉の水を飲みました。ですが、その水はヘビも飲んだ水だったようで…。
ふしぎなニワトリのココガ

あるところに母と息子が2人で暮らしていました。息子は大変親思いで、よく母親の手伝いをしました。その甲斐もあってか、畑の作物はいつも豊かに実るのでした。ところが、ある日の夕方、少年は屋根の上に干しておいたトウモロコシがなくなっていることに気づきました。さて、トウモロコシの盗っ人は一体誰なのでしょう…。
マナルマケリとカスアリドリ

むかしむかし、イリアンのビアクの酋長の息子が、海辺にやってきました。すると、カスアリドリと一緒にいる娘に目を奪われました。すっかり恋をしてしまった彼は、召使いたちに「なんとしても娘を捕まえてほしい」とお願いしました。ところが、誰一人娘を捕まえられそうにありません。みんなが諦めかけたその時、醜いおじいさんが現れて…。
さいごに
日本からは遠く離れたインドネシアですが、結構似通った話もあるみたいですね。
お話に登場する動物や果物は違えど、どこか懐かしく感じる話がたくさんあるような。
インドネシアと日本。
2つの国のお話が海流に乗って繋がっていたとしても、きっとおかしくはありませんよね。
僕はずっと昔から世界は繋がっていたと思います。
その理由の1つは、遠く離れた国でも似たようなお話があるから。
お話が伝わったものだとしたら。
それは世界が繋がっていたということ。
自然に同じようなお話が生まれていたとしたら。
それは人々が考えていることは、根源的な部分では、同じということ。
どちらにしても、深い部分で人々や世界は繋がっているのではないでしょうか。
現代の人々と同じように、昔の人々も、泣き、笑い、怒り、喜び…、同じように毎日を過ごしていたのです。
そんな時代を、昔話を通して感じることができます。
それがたとえ、長い歴史の中で脚色されたものであったとしても。
さて、今回は虹になった娘と星うらないを紹介してみました。
インドネシアの昔ばなしが21編収録されている、とても読み応えのある本です。
最後になりましたが、挿絵も魅力的ですよ。
インドネシアは影絵が有名だそうで、その雰囲気を楽しめます。
なかなか手にする機会は少ない本だと思いますが、ぜひ読んでみてくださいね。